ものづくり関係者に観てほしいインド映画

こんにちは!エリカです。

今日は、特にメーカーに勤める人に観てほしい1つの映画を紹介したいと思います。

先日、バンクーバーへ来る飛行機で、あるインド映画をみました。タイトルは「パッドマン 5億人の女性を救った男」。【以降、ネタバレ注意】

過去に一度だけTVCMを見て、Huluに追加されるのを待っていたのですが、まさか飛行機で観られるとは思っていなかったのでとても嬉しかったです。

この映画は実話に基づいたもので、ラクシュミという男性が女性用生理ナプキンをインド中に広める物語です。

ここで、みなさんは2つのことに疑問をもったのではないでしょうか。

①「え、ナプキンって普通に売ってるものでしょ?」

その通り、売ってはいるのですが、とても高価なものとされていて、貧困層にはとても買えないのです。日本の物価に換算すると、インドでは1パック1100円程するようです。ちなみに日本で売られているものは400円前後かと思います。相当高いですよね・・・。

②「え、男の人が?」

そうなんです。インドでは女性の生理はいまだにタブーとされている中、ラクシュミは行動を起こしました。日本でさえも男性が「生理用ナプキンを広める」と聞くと「え?!」という反応が返ってくるのではないかと思います。インドでは、生理は穢れたものとされており、女性は生理の間、部屋に入れずに隔離されます。その生理中の女性の扱いからも、ラクシュミの「生理用ナプキンを広める」という行動がいかに周囲に受け入れてもらえないものか想像するのは簡単でしょう。

 

この映画は、社会に対して疑問を持ち、周りから批判されながらも行動を起こした人の物語なのですが、かつて開発職だった私の視点で観たときに、次のような3つのメッセージをもらえた気がしました。

①何かを開発・発明することは時間がかかって当たり前だということ。

パッドマンの8.5割はラクシュミのトライ&エラーの繰り返しから成っています。「これでもか?!」というほど、たくさんの失敗や困難に挑戦する姿が描かれていて、そう思ったんです。

仕事に納期が定められているのは当たり前のことです。ただ、発明や開発はうまくいかないことも多いのではないでしょうか。毎日トライ&エラーの繰り返しで、うまくいったと思ったら、別のファクターがアウト、納期を伸ばしてもらわないと・・・。実際、私は1つの商品の開発に3年以上の時間がかかりました。納期を何回も伸ばしてもらって、申し訳ない思いや惨めな感情、そしてプレッシャーから身体も心もボロボロになりました。あれから2年以上が経ち、心に余裕ができた今思うことは、この映画にも描かれているように「開発には時間がかかって当たり前」ということです。

決して納期を平気で伸ばして良いと言っているのではありません。過去の私の様にうまくいかずに悩んでいる人がいるなら、まずは自信をもって明日に挑んでほしいということを伝えたくて書いています。(そもそも納期の設定がおかしい場合もあるので、自分を責めすぎないでくださいね!)

②今やっていることは、自分の強い思い込みかもしれないので、俯瞰しなさいということ。

ラクシュミはナプキンの材料が「綿」と思い込んで実験をスタートします。映画の約5割の時間は、材料が綿ではなくセルロースナノファイバーであることを知らずに実験を重ねた様子が描かれています。

開発職においても、自分の思い込みに縛られて行動してしまっていることって多いのではないでしょうか。特に自分がたくさんの苦労を経て「やっとここまでたどり着けた!」ということを経験すると、それを疑いたくなくて、結果、それがそこまで重要でないことを知らずに縛られながら開発を進めしまうことが私にもありました。物事を俯瞰し、柔軟に対応できれば、ゴールに近づけるのかな、なんて今は思います。

③目的は何かを常に振り返ること。

ラクシュミはナプキン作りに猛進しながらも、時々冷静になって目的は何かを確認する場面が何度か出てきます。例えば、格安の生理用ナプキン製造器械が完成した時に特許を取得してそれを企業に売ればお金持ちになれるよと勧められるのですが、その場合、結局のところ、企業がナプキンを高く売れば自分のそもそもの目的を達成できないと確認します。ではどうすれば一番の理想の形で格安のナプキンを広められるのか、ラクシュミは考え、あらゆる地域に器械を置き(売り)、そこで女性達の雇用も生み出すというサイクルを作りました。女性が生理期間に穢れとして扱われることや、女性の雇用が少ないことに疑問を持っていたラクシュミ。初めは「格安のナプキンを作ること」が最も明確な目的でしたが、何度も目的を確認することで潜んでいた複数の目的が露わになり、実現に結びついたように、私には見えました。

 

もし私がものづくりに関わったことがなければ、この映画を観て「すごい人がいるんだな」くらいで終わっていたかもしれません。

こんなにメッセージ性のある映画は初めてだったのでついつい書いてしまいました。

ものづくり関係者には是非観てもらいたい映画だと思います!